婚姻届を出していないパートナーが浮気をした場合、「結婚していないのだから慰謝料は取れないのでは」と諦めてしまう方がいます。

結論から言うと、事実婚(内縁関係)でもパートナーの浮気に対して慰謝料を請求できます。法律上、内縁関係には婚姻に準じた保護が与えられており、不貞行為に対する損害賠償請求も認められています。慰謝料の相場は100〜200万円程度です。

この記事でわかること: 事実婚・内縁関係が法的に認められる条件、慰謝料の相場と法律婚との違い、浮気相手への請求条件、証拠収集の方法と注意点を解説します。

事実婚・内縁関係とは

事実婚(内縁関係)とは、婚姻届を出していないが事実上の夫婦として共同生活を送る関係です。「婚姻意思」と「共同生活の実態」の2要件を満たせば法的保護を受けられ、単なる交際や同棲とは区別されます。

法的な定義

事実婚(内縁関係)とは、婚姻届を提出していないものの、事実上の夫婦と同様の共同生活を送っている関係を指します。法律用語では「内縁」と呼ばれ、判例上は「婚姻に準ずる関係」として保護されています。

重要なのは、単なる交際や同棲は事実婚ではないという点です。事実婚として法的保護を受けるには、一定の要件を満たす必要があります。

事実婚が認められる要件

事実婚が法的に認められるには、主に2つの要件が必要です。

要件1:婚姻意思があること。 双方が「夫婦として共同生活を送る」という意思を持っていることが必要です。「とりあえず一緒に住んでいるだけ」「同居しているが結婚の意思はない」という場合は、事実婚とは認められません。

要件2:夫婦としての共同生活の実態があること。 同居して生計を共にしている、家事や育児を分担している、周囲に夫婦として認知されている、といった実態が必要です。

事実婚を裏付ける客観的事実

裁判で事実婚の成立が認められやすい事実としては、住民票上の「未届の妻(夫)」の記載、同一の住所での長期間の同居(おおむね3年以上)、共同名義の銀行口座や保険、冠婚葬祭への夫婦としての出席、親族・友人への「夫婦」としての紹介、子どもの認知、などがあります。

事実婚の浮気で慰謝料を請求できる法的根拠

判例上、内縁関係にも法律婚と同様の貞操義務が認められており、パートナーの浮気に対して民法709条に基づく慰謝料請求が可能です。最高裁も「婚姻に準ずる関係」として一貫して保護する立場を取っています。

内縁関係にも貞操義務がある

判例上、内縁関係にある当事者は互いに貞操義務を負うとされています。つまり、法律婚と同様に、パートナー以外の異性と性的関係を持つことは不貞行為として不法行為(民法709条)に該当し、慰謝料の請求対象となります。

最高裁判所は、内縁関係について「婚姻に準ずる関係」として法的保護を与える立場を一貫して取っています。

法律婚との違い

事実婚の浮気と法律婚の浮気で法的に異なる点があります。

離婚手続きが不要: 法律婚では離婚届の提出や調停・裁判が必要ですが、事実婚は一方的に関係を解消できます。ただし、「正当な理由のない内縁破棄」は損害賠償の対象になります。

慰謝料の相場がやや低い傾向: 法律婚の不貞行為の慰謝料が100〜300万円であるのに対し、事実婚では100〜200万円程度が相場です。これは、法律婚ほど法的保護が強くないという裁判所の評価を反映しています。

財産分与は請求可能: 事実婚でも、共同生活中に築いた財産の分与を請求できます。

相続権はない: 法律婚と異なり、内縁のパートナーには法定相続権がありません。この点は浮気問題とは直接関係しませんが、事実婚の法的限界として知っておくべきです。

慰謝料の相場と増減要因

事実婚における浮気の慰謝料は100〜200万円が相場です。法律婚(100〜300万円)より低い傾向にありますが、内縁期間が長い場合や子どもがいる場合は増額されます。

基本相場:100〜200万円

事実婚における浮気の慰謝料は、100〜200万円が一般的な相場です。

増額要因

内縁関係の期間が長い場合(10年以上など)は、法律婚に準じた強い保護が認められ、慰謝料も高くなります。子どもがいる場合は、精神的苦痛が大きいと評価されます。浮気が原因で内縁関係が破綻した場合は、内縁破棄の慰謝料としても請求できるため、総額が高くなります。

減額要因

内縁関係の期間が短い場合(1年未満など)は、慰謝料が低額にとどまります。すでに内縁関係が破綻していた場合(長期間の別居、交流の途絶など)は、浮気があっても慰謝料が認められないことがあります。

浮気相手への慰謝料請求

事実婚のパートナーの浮気相手にも慰謝料を請求できます。ただし法律婚と異なり、「内縁関係の存在自体が争われる」「浮気相手が内縁関係を知らなかったと主張しやすい」という2つの特有リスクがあります。

請求が認められる条件

事実婚のパートナーの浮気相手に対しても、慰謝料を請求できます。ただし、以下の条件が必要です。

条件1:内縁関係が法的に認められること。 単なる同棲では浮気相手への請求は認められません。「事実上の夫婦関係」が存在していたことが前提です。

条件2:浮気相手が内縁関係を知っていたこと。 法律婚と異なり、事実婚は外部から判別しにくいという特性があります。浮気相手が「パートナーがいるとは知らなかった」と主張した場合、法律婚のケースよりも認められやすい傾向にあります。これは事実婚特有の問題点です。

条件3:不貞行為(肉体関係)があったこと。 これは法律婚の場合と同じです。

「内縁関係を知らなかった」への対策

浮気相手が内縁関係の存在を知らなかったと主張するリスクに備えるため、住民票の「未届の妻(夫)」記載、SNSでの夫婦としての投稿、共通の友人からの証言など、内縁関係が周知されていた証拠を確保しておくことが重要です。

証拠の集め方と注意点

必要な証拠は2種類

事実婚の浮気で慰謝料を請求するには、内縁関係の証拠浮気の証拠の両方が必要です。

内縁関係の証拠: 住民票(続柄欄の記載)、同一住所の郵便物・公共料金の明細、共同名義の契約書類、親族への紹介写真・記録、長期間の同居を示す賃貸契約書。

浮気の証拠: ラブホテルへの出入り写真、性的関係を示すメッセージ・やりとり、探偵の調査報告書、浮気を認める録音・書面。

事実婚特有の注意点

事実婚の場合、法律婚よりも「そもそも保護すべき関係が存在していたのか」が争われるリスクが高いです。「同棲しているだけで内縁関係ではない」と相手方に反論されないよう、内縁関係の証拠を手厚く準備することが重要です。

また、住民票に「未届の妻(夫)」の記載がない場合は、早い段階で記載変更の手続きを行うことも検討してください(ただし、浮気発覚後に慌てて変更しても証拠力は弱くなります)。

よくある質問

同棲3年で事実婚と認められますか?

同棲期間だけで事実婚が認められるわけではありません。重要なのは「婚姻意思」と「共同生活の実態」です。3年以上同居し、生計を共にし、周囲にも夫婦として認知されていれば、事実婚と認められる可能性は高いです。逆に、ルームシェア感覚で家賃を折半しているだけでは、10年同居しても事実婚とは認められにくいです。

事実婚を解消するときに離婚届は必要ですか?

不要です。事実婚は婚姻届を提出していないため、離婚届も必要ありません。ただし、一方的な内縁関係の解消は「正当な理由のない内縁破棄」として慰謝料の対象になることがあります。浮気が原因であれば、浮気をした側に正当な理由がないため、慰謝料を請求できます。

事実婚で子どもがいる場合、親権はどうなりますか?

事実婚で生まれた子どもは、原則として母の単独親権となります。父が認知をしている場合は、父母の協議で父を親権者とすることも可能です。浮気による事実婚の解消に伴い、養育費の請求は認知済みの父に対して可能です。

LGBTカップルの場合も事実婚として保護されますか?

近年、同性カップルについても「内縁に準ずる関係」として法的保護を認める裁判例が出ています。2021年の宇都宮地裁真岡支部判決では、同性パートナーの不貞行為に対する損害賠償請求を認めました。ただし、法的にはまだ判例の蓄積が少なく、地域や裁判官によって判断が分かれる可能性があります。

浮気の慰謝料請求に時効はありますか?

事実婚の不貞行為に対する慰謝料請求の時効は、法律婚と同様に「不貞行為と相手を知った時から3年」です。内縁関係の不当破棄による慰謝料も、破棄の時から3年で時効にかかります。

まとめ:事実婚でも浮気に対する法的保護は受けられる

事実婚・内縁関係であっても、パートナーの浮気に対して慰謝料を請求する権利は法的に認められています。相場は100〜200万円で、浮気相手への請求も可能です。

法律婚との最大の違いは、「事実婚の成立自体が争われるリスクがある」点と、「浮気相手が内縁関係を知らなかったと主張しやすい」点です。この2つのリスクに対応するため、内縁関係の証拠を手厚く準備することが特に重要です。

出典:

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