パートナーの浮気が発覚したとき、「離婚はしないが、不倫相手には償いをさせたい」と考える方は少なくありません。

結論から言うと、離婚しない場合でも、不倫相手に対して慰謝料を請求することは法律上可能です。ただし、請求が認められるための条件、現実的な金額の相場、そして見落とされがちな「求償権」のリスクを正しく理解しておかないと、期待どおりの結果にならないケースがあります。

この記事でわかること: 不倫相手だけに慰謝料請求できる法的根拠、請求が認められる条件と認められないケース、離婚しない場合の相場、求償権で損をしないための対策、そして請求の具体的な手順を解説します。

不倫相手に慰謝料を請求できる法的根拠

不倫(不貞行為)は、民法上の「共同不法行為」に該当します。つまり、配偶者と不倫相手の二人が共同して、あなたの「婚姻共同生活の平和」という権利を侵害した行為です。

請求先は配偶者・不倫相手のどちらでも選べる

共同不法行為の損害賠償責任は「不真正連帯債務」です。これは、被害者であるあなたが、配偶者と不倫相手のどちらに対しても、あるいは両方に対しても、慰謝料の全額を請求できるという意味です。

離婚しない場合は、配偶者に請求しても家計から支出されるだけで実質的な意味がないため、不倫相手のみに請求するのが一般的です。

請求が認められるための4つの条件

不倫相手への慰謝料請求が認められるには、以下の条件を満たす必要があります。

① 不貞行為(肉体関係)があったこと:食事やLINEのやり取りだけでは、原則として不貞行為と認められません。ただし、肉体関係がなくても「婚姻共同生活の平和を侵害する行為」があれば慰謝料が認められるケースもあります。

② 不倫相手が既婚者であることを知っていた(または知り得た)こと:不倫相手が「既婚者だと知らなかった」と主張し、かつそれが合理的である場合は、故意・過失が否定され、請求が認められない可能性があります。

③ 婚姻関係が破綻していなかったこと:不倫が始まる前から、すでに夫婦関係が実質的に破綻していた(長期別居中など)場合は、慰謝料請求が認められにくくなります。別居中の浮気で慰謝料が認められるケースや「破綻」の判断基準は別居中の浮気でも慰謝料は請求できる?で解説しています。

④ 時効が成立していないこと:不貞行為と不倫相手を知った日から3年以内に請求する必要があります。起算点の考え方や時効を止める方法は慰謝料請求の時効と期限切れを防ぐ方法で詳しく解説しています。

離婚しない場合の慰謝料相場

慰謝料の金額は「浮気の結果、婚姻関係にどれだけの影響が出たか」で大きく変動します。

離婚しない場合の相場

離婚に至らない場合の慰謝料相場は50万〜100万円が一般的です。離婚に至る場合(150万〜300万円)と比較すると低めですが、これは「婚姻関係が維持されている=精神的損害が相対的に小さい」と裁判所が判断するためです。

増額される要因

以下の要素があると、離婚しない場合でも100万円を超える慰謝料が認められることがあります。

  • 不倫関係が長期間(1年以上)に及んでいた
  • 不倫相手が配偶者に「離婚する」と唆していた
  • 発覚後も不倫関係を続けていた
  • 不倫の結果、妊娠や出産に至った
  • 未成年の子どもがいる

減額される要因

逆に、以下の要素があると減額の方向に働きます。

  • 不倫関係が短期間(数回程度)だった
  • 不倫相手の年齢が若く、配偶者との間に力関係の差があった
  • 不倫相手が十分に反省し、関係を断っている
  • 不倫以前から夫婦関係が良好ではなかった

慰謝料相場の詳細は浮気の慰謝料相場はいくら?で解説しています。

具体的にいくら請求できそうか確認したい場合は、慰謝料自動計算シミュレーターで婚姻期間や不倫の状況を入力すると概算額がわかります。

見落とされがちな「求償権」のリスク

不倫相手だけに慰謝料を請求する場合、最も注意すべきなのが求償権の問題です。これを理解していないと、「慰謝料を受け取ったのに家計全体ではマイナス」という事態になりかねません。

求償権とは

不倫は配偶者と不倫相手の「共同不法行為」です。不倫相手があなたに慰謝料を支払った後、不倫相手は共同不法行為者である配偶者(あなたのパートナー)に対して、「自分の責任割合を超えて支払った分を返してほしい」と請求する権利があります。これが求償権です。

具体的にどうなるか

たとえば、不倫相手に100万円の慰謝料を請求し、全額を受け取ったとします。責任割合が配偶者60%・不倫相手40%と判断された場合、不倫相手はあなたの配偶者に対して60万円の求償権を行使できます。

この場合の家計の収支は以下のとおりです。

  • 不倫相手からの慰謝料:+100万円
  • 配偶者が支払う求償金:-60万円
  • 家計の実質的な手取り:40万円

弁護士費用を差し引くと、手元にほとんど残らない、あるいはマイナスになるケースもあります。弁護士費用の詳しい内訳は浮気の慰謝料相場と請求の流れで解説しています。なお、不倫相手も既婚者(ダブル不倫)の場合は4者間の利害がさらに複雑になります。詳しくはダブル不倫(W不倫)の慰謝料と対処法を参照してください。

なお、示談交渉の実務では、求償権の放棄を条件に慰謝料額を一定程度減額する交渉が一般的です。ある示談事例では、当初80万円の提示だった不倫相手に対し、弁護士が訴訟提起を宣告して交渉を続けた結果、「慰謝料150万円の支払い+配偶者への求償権放棄」の合意を引き出すことに成功しています。求償権放棄は法律上「債務免除」にあたるため、書面で明確に記載することが不可欠です。

求償権リスクを回避する方法

最も有効な方法は、示談書(和解書)に**「求償権を放棄する」条項を盛り込む**ことです。

不倫相手に慰謝料を支払ってもらう代わりに、「今後、配偶者に対して求償権を行使しない」と合意させます。この条項があれば、配偶者への請求は発生しません。

求償権放棄の示談書への記載方法には3つのパターンがあります。完全放棄型は慰謝料全額の支払いと引き換えに求償権を完全に放棄させる方式です。減額交換型は求償権放棄を条件に慰謝料額を減額する方式で、実務上最も合意が得られやすいとされています。分割払い条件型は求償権放棄の代わりに分割払いを認める方式です。求償権放棄は法律上「債務免除」にあたるため、口頭の合意では不十分であり、必ず書面に明記する必要があります。

ただし、求償権の放棄はあくまで不倫相手の「合意」が必要です。相手が拒否した場合に強制はできないため、交渉の進め方が重要になります。弁護士を通じた交渉であれば、求償権放棄を含む示談書の作成に慣れているため、スムーズに進むケースが多いです。なお、逆に慰謝料を請求された側の対処法や減額交渉の方法は不倫の慰謝料を請求されたら?減額交渉と正しい対処法で解説しています。

裁判例を見ると、求償権の負担割合は「配偶者60〜70:不倫相手30〜40」に傾くケースが多く、配偶者側が積極的に関係を主導していた場合は「配偶者90:不倫相手10」まで偏ることもあります。実際に、東京地裁令和3年2月25日判決では、不貞配偶者が独身を偽って関係を主導していたと認定され、負担割合は「配偶者70:不倫相手30」と判断されました。求償権放棄を示談の条件に盛り込む際は、この負担割合を交渉カードとして活用することが有効です。

実際に、求償権放棄条項を入れなかったことで家計が赤字になった事例があります。ある当事者は、離婚せずに不倫相手から150万円の慰謝料を回収しました。しかし示談書に求償権放棄を盛り込まなかったため、不倫相手が夫に対して75万円を求償。探偵費用80万円と合算すると、家計の収支は「150万−75万−80万=マイナス5万円」と完全な赤字でした。本人も「大損した」と振り返っています。慰謝料の「額面」だけでなく、求償権と調査費用を含めた実質収支で判断することが不可欠です。

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不倫相手への慰謝料請求の手順

不倫相手に慰謝料を請求する際は、内容証明郵便を使って請求の意思を正式に伝えるのが一般的です。内容証明郵便の書き方や送り方、記載すべき項目については不倫の慰謝料請求に使う内容証明郵便|書き方と送り方で詳しく解説しています。

ステップ1:証拠を確保する

慰謝料請求の成否を決める最重要ステップです。不貞行為の証拠がなければ、不倫相手が否認した場合に請求を通すことができません。

法的に有効な証拠として最も強力なのは、ラブホテルや不倫相手の自宅への入退室を撮影した探偵の調査報告書です。LINEのやり取りやレシートは補助的な証拠にはなりますが、単独では不十分なケースが多いです。

証拠の種類と証明力については浮気の証拠になるもの・ならないもの完全一覧で解説しています。

ステップ2:不倫相手を特定する

慰謝料を請求するには、相手の氏名と住所が必要です。「LINE上の名前しか知らない」「顔は分かるが名前が分からない」というケースでは、探偵に身元調査を依頼するか、弁護士を通じて弁護士会照会(23条照会)で情報を取得します。

探偵に浮気調査を依頼する際に、不倫相手の身元特定も合わせて依頼しておくのが最も効率的です。手持ちの情報別の特定ルートや、探偵と弁護士の使い分けは不倫相手の身元を特定する方法で詳しく解説しています。証拠収集と身元特定に強い探偵社はおすすめ探偵社ランキングで比較できます。

ステップ3:弁護士に相談する

証拠と相手の情報が揃ったら、弁護士に相談します。弁護士に依頼する主なメリットは以下のとおりです。

  • 請求金額の妥当な範囲をアドバイスしてもらえる
  • 内容証明郵便を弁護士名義で送れる(相手へのプレッシャーが段違い)
  • 求償権放棄を含む示談書を適切に作成してもらえる
  • 相手との直接交渉を避けられる

ステップ4:内容証明郵便で請求する

弁護士名義の内容証明郵便を不倫相手に送付します。内容には、不貞行為の事実、慰謝料の金額、支払い期限、連絡先が記載されます。

弁護士からの書面を受け取ること自体が強い心理的プレッシャーになるため、この段階で示談に応じるケースが少なくありません。実際に、証拠が完璧でなくても弁護士の内容証明をきっかけに不倫相手が自白し、慰謝料を獲得した事例があります。

ステップ5:示談交渉

相手が請求に応じれば、金額・支払い方法・求償権の放棄・今後の接触禁止条件などを交渉します。合意に達したら示談書を作成します。

示談書は公正証書にしておくと、相手が約

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