浮気が原因で離婚を決意したとき、子どもがいる家庭にとって最大の不安が「養育費は本当にもらえるのか」という問題です。

厚生労働省の調査によると、養育費を「現在も受け取っている」母子世帯の割合は約28%にとどまっています。つまり約7割の家庭が養育費を受け取れていないのが現実です。しかし、2026年4月から施行された法定養育費制度など、養育費を確保するための法的な仕組みは年々強化されています。

この記事でわかること: 養育費の相場と算定表の読み方、2026年新設の法定養育費制度、不払いを防ぐための公正証書の作り方、不払い時の強制執行の手順、そして養育費を確実に受け取り続けるための具体策を解説します。

養育費の相場:算定表の読み方

養育費算定表とは

養育費の金額は、裁判所が公表する養育費算定表をもとに算出されます。算定表は、支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)の年収、子どもの人数と年齢に応じて金額の目安を示しています。

算定表は子どもの人数(1〜3人)と年齢区分(0〜14歳・15歳以上)に応じて9つの表に分かれており、裁判所のウェブサイトで公開されています。

年収別の養育費の目安

以下は子ども1人(0〜14歳)の場合の目安です。支払う側が会社員、受け取る側がパート収入100万円と仮定しています。

支払う側の年収養育費の月額目安
300万円2〜4万円
500万円4〜6万円
700万円6〜8万円
1,000万円10〜12万円

子どもが2人の場合は1.5〜1.8倍、3人の場合は1.8〜2.2倍が目安です。また、子どもが15歳以上になると教育費の増加を反映して金額が上がります。

算定表の読み方の注意点

算定表はあくまで「目安」であり、以下の事情が考慮されて増減することがあります。

  • 私立学校の学費:公立を前提とした算定表では私立の学費をカバーできないため、増額が認められるケースがある
  • 医療費:子どもに持病や障害がある場合は増額要因
  • 住宅ローン:支払う側が住宅ローンを負担している場合は減額要因として考慮される場合がある

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2026年4月施行:法定養育費制度

法定養育費とは

2026年4月1日から施行された法定養育費制度は、養育費の取り決めがなくても、離婚した日から子ども1人あたり月額2万円の養育費が法律上当然に発生する制度です。

これまでは、養育費の取り決めをしないまま離婚すると、相手に支払い義務を主張する法的根拠が弱い状態でした。法定養育費制度により、取り決めの有無にかかわらず最低限の養育費が確保されるようになりました。

法定養育費のポイント

  • 2026年4月1日以降に離婚した場合に適用
  • 子ども1人あたり月額2万円(法定額)
  • 養育費の取り決めがない場合に「暫定的な養育費」として機能
  • 不払いの場合は担保権の実行による差押えが可能
  • 当事者間で別途養育費を取り決めた場合は、その金額が優先される

法定養育費はあくまで「最低保障」であり、算定表に基づく本来の養育費より大幅に低い金額です。子どもの生活を十分に支えるためには、別途きちんと養育費を取り決めることが不可欠です。

養育費の不払いを防ぐ5つの対策

対策①:養育費を公正証書で取り決める

養育費の不払いを防ぐ最も有効な方法は、離婚時に養育費の取り決めを公正証書にすることです。公正証書に「強制執行認諾文言」を入れておけば、不払いが発生した場合に裁判を経ずに直接強制執行が可能になります。

公正証書に記載すべき養育費の項目は以下のとおりです。

  • 養育費の月額
  • 支払い期間(通常は子どもが成人または大学卒業まで)
  • 支払い日(毎月末日、毎月25日など)
  • 振込先口座
  • 増額・減額の条件(進学、病気、再婚など)
  • 強制執行認諾文言

公正証書の作り方の詳細は不倫慰謝料を確実に回収する方法で解説しています。

対策②:離婚調停で養育費を決める

協議離婚では養育費の取り決めを口約束で済ませてしまうケースが多いですが、調停で決めた場合は調停調書が作成されます。調停調書は確定判決と同じ法的効力を持つため、不払い時は直接強制執行が可能です。離婚調停の流れは浮気が原因の離婚調停|申立てから成立までの流れで解説しています。

対策③:養育費保証サービスを利用する

自治体や民間企業が提供する養育費保証サービスを利用する方法もあります。保証会社が養育費の支払いを保証し、不払いが発生しても保証会社から受け取れる仕組みです。自治体によっては保証料の補助制度もあるため、お住まいの市区町村に確認してください。

対策④:相手の勤務先・口座情報を把握しておく

強制執行を行う際には、差し押さえる財産(給与・預金)を特定する必要があります。離婚時に相手の勤務先と銀行口座を把握しておくことで、不払いが発生した場合に迅速に対応できます。

対策⑤:定期的に記録を残す

養育費の支払い状況を毎月記録しておいてください。振込の有無、金額、日付を記録しておけば、不払いが発生した場合の証拠になります。

養育費が払われなくなったときの対処法

ステップ1:催促の連絡

まずは電話やメール・LINEで支払いを催促します。やり取りは必ず記録に残してください。

ステップ2:内容証明郵便の送付

催促しても支払いがない場合は、内容証明郵便で支払いを求めます。「期限内に支払いがなければ法的措置を取る」旨を記載します。内容証明郵便の書き方は不倫の慰謝料請求に使う内容証明郵便|書き方と送り方を参照してください。

ステップ3:履行勧告・履行命令

調停調書や審判書がある場合、家庭裁判所に履行勧告を申し立てられます。費用は無料です。裁判所が相手に対して「養育費を支払うように」と勧告してくれます。強制力はありませんが、裁判所からの連絡は心理的なプレッシャーになり、これだけで支払いが再開するケースもあります。

さらに強い措置として履行命令があり、正当な理由なく従わない場合は10万円以下の過料が科されます。

ステップ4:強制執行(給与差押え)

公正証書・調停調書・判決のいずれかがある場合は、強制執行を申し立てられます。養育費の強制執行には特別な優遇措置があります。

給与の差押え率が高い:通常の債権では給与の4分の1までしか差し押さえられませんが、養育費の場合は2分の1まで差し押さえが可能です。

将来分もまとめて差押え可能:養育費の場合、滞納分だけでなく将来の養育費もまとめて差し押さえができます。つまり、一度強制執行を行えば、毎月自動的に相手の給与から養育費が天引きされる状態を作れます。

ステップ5:財産開示手続・第三者からの情報取得

相手の勤務先や口座がわからない場合は、裁判所を通じて以下の調査が可能です。

財産開示手続:相手本人に裁判所で財産を開示させる制度です。正当な理由なく出頭しない場合や虚偽の陳述をした場合は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

第三者からの情報取得手続:市区町村に勤務先情報を、銀行に預金口座情報を照会できる制度です。

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浮気が原因の離婚と養育費の関係

浮気した側にも養育費の請求権がある

「浮気した側が親権を持った場合、養育費を請求できるのか」という疑問がありますが、答えは「できます」。養育費は子どものための費用であり、親の浮気の有無とは法的に別の問題です。浮気した側が親権者になった場合でも、もう一方の親に養育費の支払い義務があります。

養育費と慰謝料は別々に請求できる

養育費と慰謝料はまったく別の性質の費用です。養育費は「子どもの生活と教育のための費用」、慰謝料は「精神的苦痛に対する損害賠償」です。慰謝料の支払いをもって養育費を免除することはできません。慰謝料の相場は浮気の慰謝料相場と請求の流れで確認できます。

養育費の取り決めは離婚前に必ず行う

離婚後に養育費を取り決めることも法的には可能ですが、離婚後は相手と連絡が取りにくくなり、交渉が困難になるケースが多いです。離婚前に必ず養育費の金額・期間・支払い方法を取り決め、公正証書または調停調書の形で残してください。

養育費の増額・減額が認められるケース

増額が認められるケース

  • 子どもの進学(高校・大学)に伴う教育費の増加
  • 子どもの病気・障害による医療費の増加
  • 支払う側の収入が大幅に増加した場合

減額が認められるケース

  • 支払う側が失業・減収した場合
  • 支払う側が再婚して新たな扶養義務が生じた場合
  • 受け取る側が再婚し、再婚相手が子どもと養子縁組した場合

増額・減額を求める場合は、家庭裁判所に養育費変更調停を申し立てます。一方的に支払いを減額・停止することはできません。

養育費を確実に受け取るために浮気の証拠が重要な理由

養育費と浮気の証拠は一見関係がないように思えますが、実は密接に関連しています。

離婚交渉で有利な立場を確保できる:浮気の証拠があれば、慰謝料だけでなく養育費の交渉でも有利に進められます。浮気した側は「早く離婚を成立させたい」という心理が働くため、養育費を含む離婚条件に合意しやすくなります。

調停・裁判で心証が良くなる:裁判所は、浮気で家庭を崩壊させた側に対して厳しい姿勢を取る傾向があります。養育費の金額を算定表の上限付近で認める根拠にもなります。

公正証書の作成に応じさせやすい:浮気の証拠を持っている状態であれば、「養育費の公正証書を作ること」を離婚の条件として提示しやすくなります。

証拠の集め方は浮気の証拠の集め方で、探偵社の比較はおすすめ探偵社ランキングで確認できます。親権の判断基準は浮気が原因の離婚で親権はどうなる?を参照してください。

よくある質問

Q. 養育費の取り決めをしないまま離婚してしまいました。今からでも請求できますか?

請求できます。離婚後でも家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立てることが可能です。2026年4月以降に離婚した場合は、法定養育費(子ども1人あたり月額2万円)が離婚日から自動的に発生しています。ただし、別途取り決めをしない限り法定額にとどまるため、早めに調停を申し立てて適正な金額を確定させてください。

Q. 相手が再婚しても養育費は払い続けてもらえますか?

原則として、養育費の支払い義務は相手が再婚しても継続します。ただし、再婚によって新たな扶養義務(新しい配偶者や子ども)が生じた場合は、減額の申し立てが認められるケースがあります。受け取る側が再婚し、再婚相手が子どもと養子縁組した場合は、養育費が減額・免除される可能性が高くなります。

Q. 養育費はいつまで支払ってもらえますか?

法律上の明確な終期はありませんが、実務上は「子どもが成人するまで(18歳)」または「大学卒業まで(22歳)」と取り決めるケースが一般的です。2022年4月の民法改正で成年年齢が18歳に引き下げられましたが、「養育費は18歳まで」と自動的に短縮されるわけではなく、取り決め次第です。大学進学を前提とするなら「22歳の3月まで」と明記しておくことを推奨します。

Q. 養育費と面会交流は引き換えですか?

いいえ。養育費の支払いと面会交流は法的に別の問題です。「養育費を払わないなら会わせない」「会わせてくれないなら払わない」という主張は、どちらも法的には認められません。ただし、離婚後の面会交流を適切に実施することが、養育費の支払い継続率を高めるという調査結果もあります。

Q. 養育費の強制執行にかかる費用はいくらですか?

強制執行の申立て費用は印紙代4,000円+切手代程度です。弁護士に手続きを依頼する場合は10〜20万円程度かかりますが、将来の養育費が確実に天引きされる仕組みを作れるため、長期的に見れば費用対効果は高いです。

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